伊勢新聞

<1年を振り返って>鈴鹿市の地域づくり協議会 史跡、伝統行事を番組に

【地域が一丸となり、刈り取ったわらで作ったわらアートの「ペンギン」=鈴鹿市深溝町の深溝ライスセンターで】

三重県鈴鹿市が市民と協働でまちづくりを進めるために、平成24年から取り組んできた各地域の地域づくり協議会が今年度、市内全地域に揃う。計28協議会のうち、27協議会はすでに活動を始めており、現在設立準備委員会の段階の一地域も年度内には協議会となる見込み。

コロナ禍にも負けず、地域の特色を生かして活動する各地区のまちづくり協議会の取り組みを振り返る。

7月、市と県立神戸高校(鳥井誠司校長)、加佐登地区まちづくり協議会(長谷川俊男会長)はまちづくりの活性化を目的とした「2023加佐登まちづくり活性化施策広報プロジェクトに関する覚書」を締結。加佐登地区の活性化に向け、3者が連携して取り組むことを決めた。

同高放送部の部員らが中心となり、加佐登地区の史跡や伝統行事などにともに参加しながら取材し、3年間で10本程度の映像番組を作成し、動画配信などで発信していく計画。若者の参加を増やすことで、地域行事の盛り上げにも期待する。

これまでに市指定民俗文化財「広瀬のかんこ踊り」の取り組みについてまとめた1本を制作。今月19日には、部員3人が白鳥中で実施したしめ飾り教室の活動を撮影し、取材した。部員の1人、1年の打田羽麗さん(16)=同市国分町=は「今まで地域の活動には関わったことがなかった。自分が知らない地域に関わったことで、地元のまちづくりにも興味を持った」と話す。

長谷川会長(74)=同市加佐登四丁目=は「記録を残すことで後世に伝えることができる。また、若い世代との交流はまちの活性化にもつながる」と話す。

深伊沢地域づくり協議会(名村一宏会長)は、地域づくりの一環として、9月から約2カ月かけて同市深溝町の深溝ライスセンター敷地内で、刈り取った稲わらを使った「わらアート」による高さ約4メートルのペンギン1体を制作した。

使用したわらは地元の休耕田約90ヘクタールに苗を植えて育て、今年のデザインは、地区内の小中学生からアイデアを募集し、市立鈴西小6年小屋口朱々さんの作品を選んだ。

11月には松阪市仁柿住民協議会(加藤英郎会長)と「わらアート」を主体とした交流活動で連携を深める姉妹提携の協定を締結。今後、さらに活動の幅を広げる。

名村会長(77)=同市深溝町=は「ペンギンは地域のシンボル。ものを作ることで幅広い世代で交流の幅が広がり、仲間意識ができて、地域づくりへの興味にもつながってきた。それがまちづくりの基本かなと思う」と話す。

牧田地区地域づくり協議会(中川悟会長)は、地元の甲斐町出身で、私財をなげうって鈴鹿川に橋を架けた地域ボランティアの先駆者、前川定五郎(1832―1917年)の顕彰活動に取り組んでいる。今年は下部組織の一つ、牧田公民館運営委員会(加藤澄雄委員長)が、手作りの定五郎缶バッジと缶マグネットを作製。11月に同館で開催した「2020定五郎翁パネル展」で、百円以上の寄付者に返礼品として進呈した。

デザインは地区内のグラフィックデザイナー藤山麗さん(43)=同市算所一丁目=が考案。寄付金は今後の啓発活動に活用するという。中川会長(65)=同市平田本町二丁目=は「定五郎のことを多くの人に知ってもらいたい」と話す。

11月下旬、石薬師地区明るいまちづくり協議会環境部(伴紀征部会長)は、同町の国道一号線と県道鈴鹿宮妻峡線の交差点付近にある私有地、約70平方メートルに花壇一基を完成させた。

同町は植木業が盛んなことから、花壇には緑色のタマリュウや赤色のオタフクナンテンなど7種類の植木を植えた。

今後は看板や竹垣の設置などを計画しているほか、地元老人会による月1回の草刈りなど、地域全体で管理していくという。

伴部会長(72)=同市石薬師町=は「地区の玄関口。来年の三重とこわか国体は町内で馬術競技もあるので、さらに多くの人が行き来する。歓迎の気持ちを伝えたい」と話す。

末松則子市長は11月27日の定例記者会見で、「ようやく足並みが揃う。それぞれの特色を出していただきながら、地域のまちづくりに向き合ってもらいたい。市はそのサポートをしていく」と今後の活動に期待を込めた。