伊勢新聞

2020年12月21日(月)

▼家族が新型コロナウイルス感染症の検査を受けた生徒に「おまえが来たでマスクするわ」と県立高の40代教諭が発言した。鈴木英敬知事が「聞いて耳を疑った」。同感。ではあるが、耳を疑った理由も一致しているかどうか

▼コロナ第3波の兆しに「緊張感を持って抑え込む」と言っていたら、県庁がクラスター(感染者集団)になった。政府の新型コロナ感染症対策分科会の「偏見・差別とプライバシーに関するワーキンググループ」の一員となり、コロナ対応の特措法に「差別」「偏見」の文言がないなど指摘し、特定飲食店から感染者が出たとSNSにデマを流した男女を逮捕したなどの報告をしたのに、またもお膝元の高校教諭の妄言である

▼面目丸つぶれに同情を禁じ得ないが、もう一つ、県教委教職員課がこの教諭の発言を「差別ではない」とし、教育長が「差別だ」と修正したことは知事にとって耳を疑うことだったか。差別は集団が対象で、人権は個人、と言ったのは武村泰男元三重大学長。発言が差別かどうかはともかく人権問題であり、中傷、偏見であることも間違いない

▼感染者が判明した学校へ「怖い」「危ない」などの投稿が相次いだことが「ネットパトロール」で分かったが、県教委は「個人が特定される投稿はなかった」としてリスクは最も低いとし、木平芳定教育長は「誹謗中傷や人権侵害が広がらないよう注視していく」と述べた。こちらのメンツも形無しだ

▼混乱か。いや前教育長の時は知事の指摘で方針がくるくる変わった。自浄作用が働く組織に脱皮しつつあると期待してみるか。