伊勢新聞

2020年12月19日(土)

▼新型コロナウイルス対応の県の来年度予算案の「コロナ枠」にコロナと関連がない予算が要求されていると指摘を受けた河口瑞子観光局長の答弁がおもしろい

▼指摘されたのは太平洋・島サミットの機運醸成に向けた費用。河口局長は「コロナ禍やコロナ後を見据えた」機運醸成のためとしたあと「コロナとコロナ以外の線引きが難しい部分がある」。塀の上を歩いていてつい内側に落ちた趣がある

▼時勢やトップの方針に予算の名目を合わせるのは公務員の習性。森喜朗首相がIT(情報技術)立国を提唱したら予算要求がIT一色に染まったことは何度か書いた。東日本大震災復興枠に似ても似つかぬ事業が名目を変えて要求されていたことも多かった

▼県でもリゾート法成立当時はリゾート一色で、ゴルフ場開発規制が緩和され、収拾がつかなくなった。北川県政では何でもかんでも「生活者起点」。会議の名称も「さわやか会議」。野呂県政誕生では、松阪市長時代に唱えた「もう一つの公」を知るため同市に日参した

▼鈴木県政だとまず防災。次いで自然再生エネルギーか。風力発電や太陽光への旗を振り、計画や開発が殺到して地域との摩擦を生んだ。コロナ枠では、三谷哲央委員が「コロナと付けば何でも良いわけではない」。その通りだが、コロナ禍か、コロナ後かに迎えることになるサミットの運営がこれまで通りというわけにもいくまい

▼野呂県政2年後に県民局の会議室で、壁に貼られたままの黄ばんで破れた「さわやか会議」の紙が風でパタパタ音を立てていた。その時の苦笑よりは爽快な気がする。