伊勢新聞

<1年を振り返って>志摩市長選・橋爪氏初当選 16年間の二頭政治終焉

【初登庁に伴い職員から花束を受け取る橋爪市長=11月2日、志摩市役所で】

任期満了(10月30日)に伴い10月18日に投開票された志摩市長選は、新人で元市議の橋爪政吉氏(45)=大王町波切=が、現職竹内千尋氏(61)=阿児町神明=と元職大口秀和氏(69)=志摩町和具=を相手に、次点に5千票以上差をつける大差で破り、三つどもえの選挙戦を制した。新市誕生以来16年間続いた竹内・大口両氏による二頭政治が終わりを告げた瞬間だった。

平成28年の市議補選で初当選した橋爪氏は、旧町合併による新市誕生以来続いた、両氏による旧体制からの脱却をうたい、「チェンジ」を合い言葉に、「新しい志摩」に向けた変革の必要性を強調。価値観創造や新型コロナ対策を含む危機管理体制の強化、産業支援や教育、行政改革を主な公約に掲げて支持を訴えた。

元町長を務めた父親の地盤でもある旧大王町を拠点に、自身と近い世代の経営者仲間らの後押しで多くの人員を動員。自民、立憲民主両党の相乗り推薦も受けて勢いを伸ばした。

当日の有権者数は4万2704人(男1万9735人、女2万2969人)で、投票率は前回選挙より5・04ポイント増となる63・05%となり、結果として若い世代の関心を集めることに成功。次点の竹内氏に5110票差をつける1万4169票を獲得して当選した。

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新型コロナウイルス感染拡大の影響下で行われた県下初めての首長選挙ということもあり、その対応にも注目が集まった。

各選挙事務所の入り口には消毒液が置かれ、人の出入りに伴い検温が行われた。各陣営それぞれ多人数を集めた個人演説会の頻度を減らし、街頭演説やSNS(会員制交流サイト)を中心に政策をアピールするなど、初めての対応に試行錯誤する姿が目立った。

一方で、依然として一部で個人集会を開く動きはあり、投開票日には事務所に入りきらないほどの人が押し寄せるなど、「3密」回避に向けた徹底した感染防止対策がとられていたとは言えない状況だった。

選挙に先立ち、志摩青年会議所主催で開催予定だった公開討論会は、主催者側の立場やコロナ対策を巡って一部候補者が参加を辞退し、中止を余儀なくされた。加えてSNSの利用やポスター掲示等を巡っては、竹内、大口両氏が橋爪氏の当選無効や選挙無効を訴える異議申立書を同市選管に提出(12月2日付で却下決定)するなど、今後の選挙活動のあり方に対する課題も見えた。

橋爪氏は11月2日の初登庁に伴う市長会見で、子育て世代に向けた事業に優先的に取り組む考えを示し、少子化対策として出産祝い金や学校給食の完全無料化、財源確保に向けた公共事業の契約見直しを強調した。

同20日の市議会に向けた所信表明では、「長期化する見通しのコロナ禍で、市民生活への影響を熟考し、民間手法の活用を含めさまざまな方法を探りながら財源確保、財政健全化に努めたい」と演説。価値観のチェンジ▽安心のチェンジ▽産業のチェンジ▽教育のチェンジ▽行政のチェンジ―の「5つのチェンジ」を重点施策に挙げ、「各事業を検証しながら必要・不必要な事業を精査し、並行して行政のスリム化について検証して新しい志摩市の再建を目指す」と呼び掛けた。

新年度から本格的に始動するとみられる橋爪市政。景気回復や少子高齢化など課題が山積する中で「閉塞(へいそく)感」をどう打破するか、手腕に注目が集まっている。