伊勢新聞

2020年12月11日(金)

▼県は県議会常任委に感染症予防計画改定案を説明した。「人権の尊重・差別の禁止」を盛り込み、県や市町が正しい知識の普及に努めると明記した。正しい知識とは差別禁止についてか、新型コロナウイルスについてか。その趣旨やよし、であろう。惜しむらくは、どちらにしろ、県が果たして「正しい知識」を持っているかどうか、不安なことである

▼同時に説明した無症状や軽症の患者を自宅療養させる方針について見れば分かる。指標の感染者数を超えても第2波の到来をなかなか認めようとしなかった理由について、鈴木英敬知事はしばしば十分な医療体制をあげていた。それだけに、第3波の到来を認める前に病床使用率が49・57%の高率で「ひっ迫の手前」と唐突に公表した時はキツネにつままれたような心地がした

▼だから、医療機関の負担を減らすため、感染者は入院を経ずに宿泊療養施設に入ることを認める方向で検討をするという。百室確保した宿泊療養施設の利用者は8人。軽症や無症状者を外来から直接移動させることで病床ひっ迫に備える

▼その上で、宿泊療養施設を平時から確保すると明記するのは現行の後追いか。その利用を飛び越えて軽症者などを自宅療養させるという。家庭内感染については、しおりの配布で防止するともいう。いかにも場当たり的だ

▼感染症患者らへの差別解消というのも人権や差別禁止に関係する問題かどうか。デマや中傷はともかく、感染症患者と無感染者との間に扱いの差は出るのは当然ではないか。県庁クラスターとは別の意味で大丈夫かという気がしてくる。