伊勢新聞

2020年12月10日(木)

▼病院の待合室で、近くに住む高齢の女性3人がたまたま顔を合わせた。「久しぶり」「最近はあまり出歩けないから」「お医者さんがね、外食はなるべく控えてください、って言うし」。換気が行き届いた待合室で、3人はマスクをきちんとして、しばし話の花を咲かせた

▼90代の、名前は仮に栁風さんと、80代後半の柳眉さん、同前半の柳枝さん。「片足棺おけに突っ込んどる」と柳眉さんが笑う。「私なんか、この世の者じゃないから」と栁風さんが応じ、柳眉さんが「私らの年代はホント、生きてないと思われてるみたい。新型コロナウイルスで死んでも、新聞などには容体が急変して死亡と書かれるだけ」

▼「災害などで犠牲になると、どうして巻き込まれたか、どんな人だったかが少しは載るけど、コロナはまた違うのかな。トラベルなんかしたわけじゃなく、おとなしくしていたのにうつされたと思うんだけど、なんかぞんざいに扱われているようで嫌だ」と柳枝さん

▼「県庁もクラスター(感染者集団)だっていうじゃない。司令塔がそんなんで大丈夫なんかねえ」と柳眉さん。「県庁は行くこともないけど、自宅待機で誰もいないんじゃないの。来ないでくれと張り紙を出しているって言うし」と柳枝さん

▼「それでもボーナスはちゃんと出るんだから公務員はいいね」と柳眉さん。「でも、今年は感染対策の徹底でか、インフルエンザの患者はこの病院には1人も現れていないと言ってた」と柳風さん

▼3人とも付き添いはなく、1人で来て薬をもらい、久々のおしゃべりで元気になって帰って行った。