伊勢新聞

<1年を振り返って>新型ウイルス 県内感染拡大収まらず 病床確保に課題“選択”想定も

【新型コロナ対応の病床稼働状況(三重県提供)】

三重県内でも新型コロナウイルスが猛威を振るった1年だった。感染者数は全国の「波」に応じて増減を繰り返し、8日までの延べ人数は967人に。少なくとも年内には1000人を超える見通しだ。

県内で初の感染判明は1月30日。中国・武漢市から県内に戻っていた男性だった。2月中の感染判明はなかったが、3月以降は新規感染者が相次ぎ、8月には1カ月間の新規感染者が百人を超えた。

4月には、四日市市内の50代男性が検査や入院を経ずに死亡し、その後の検査で陽性と判明。この男性が感染者としては県内初の死者となった。県内では今月8日までに10人の感染者が死亡した。

当初の課題は「検査」だった。保健所の帰国者・接触者相談センター(当時)は海外の滞在歴や肺炎症状などがなければ検査を認めず、県民から「検査を受けさせてもらえない」との声が相次いだ。

同様の声は医師からも。県保険医協会が5月、県内の開業医に実施したアンケートでは、感染が疑われる患者の検査を保健所などに依頼した医師のうち、約5割が「検査を拒否された」と回答した。

背景には国の検査基準が厳格だったことに加え、検査の体制が十分でなかったこともあった。県内で検査を担ったのは保健環境研究所だけ。1日当たりの最大検査件数は百件程度にとどまっていた。

その後、県は検査機器の追加や感染症指定医療機関の協力などで検査体制を強化。1日当たりの最大検査件数は、約6500件と大幅に増加した。現在は診療所で検査を実施しているケースもある。

一方、県内の感染状況は「第3波」で深刻化している。11月の新規感染者は293人となり、月ごとでは最多だった8月の279人を上回った。12月も既に百人以上の感染が確認された。

1日当たりの新規感染者も先月28日には29人となり、県内の過去最多を更新した。県内で16事例が確認されているクラスター(感染者集団)も、うち6事例が先月下旬以降に発生している。

そんな中で、新たに直面しているのが病床確保の課題。10月中は1桁台で推移していた新型コロナ専用の病床使用率は、感染者の増加に伴って先月から急増。今月からは50%前後で推移している。

新型コロナウイルス感染症対策本部の担当者は「医療体制がひっ迫しているというわけではない」としつつ「病床使用率は、あくまでベッドの話。医療機関に負荷が掛かっているのは事実だ」と話す。

このため、県は百室を確保している宿泊療養施設に軽症者や無症状者を移送するなどして対応する方針。医師の判断によって無症状者や軽症者の自宅療養を可能とする方向でも調整を進めている。

一方、医療保健部は病床が本格的に不足した事態の対応として、症状に応じて入院させる患者を〝選択〟せざるを得ない状況も想定している。現状の「入院原則」を「自宅待機原則」にするとの考え方だ。

「あまり考えたくはない対応だが、今後の状況が読めない中では想定せざるを得ない」と担当者。「そのような事態を避けるためには、これ以上に感染者を増やさないことが何よりも重要だ」と話す。