新型コロナウイルスの世界的蔓(まん)延がスポーツ界にも影を落とした1年だった。3月の東京2020オリンピック・パラリンピック開催延期決定に始まり、10月には来年秋、三重県内で開催予定の三重とこわか国体の総合開会式が感染拡大防止の理由で史上初のオンライン開催が決まるなど県スポーツ界にもさまざまな影響を及ぼしている。コロナ禍で各種大会が次々と中止になるなか、アスリートたちは新しい目標に向かって歩みを続け、運営側も活動の成果発表の機会を作ろうと奮闘する。
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県高体連は県教委と共催して県高校総体の代替大会「県高校体育大会」を7月から順次実施中だ。新型コロナウイルスの影響で全国高校総体中止が決まった4月以降、特に最終学年の生徒たちの部活動成果の発表の場になることを目標に代替大会の開催を検討。例年5月末から6月初旬にかけて集中開催しているが今年は感染症予防のため、種目ごとに分散して開催。すでに26種目の開催を終え、来年1月に開催予定のスキー1種目を残すのみとなった。
開催にあたっては感染拡大防止策を示したガイドラインを策定。公正が保たれる最低人数で代理抽選を行う▽選手及び役員が集まっての開・閉会式は実施しない―などの運営面から、入り口に手指消毒液を設置▽ドアノブ、取手、テーブル、いすなどをこまめに消毒▽トイレ及び手洗い場に石けん(ポンプなどが望ましい)を用意―など競技会当日、会場内で取る対策まで細かく設定している。
県大会以外の大会も。新型コロナウイルスの影響で中止となった硬式野球の「全国高校野球選手権三重大会」に代わる独自の大会「2020年三重県高等学校野球夏季大会」を7月から8月にかけて開催した県高野連は、岐阜県高野連と連携して8月、それぞれの独自大会で1位になったいなべ総合、大垣日大両校の交流試合「2020年岐阜県・三重県高等学校野球交流試合」を岐阜市で開いた。
両県知事の働き掛けを受けて両県の高野連が開催に動いた。夏の甲子園が一県一代表となるまで昭和23年から同49年まで甲子園出場権をかけて三岐大会を開いてきた両県。大垣日大が9―8で制した46年ぶりの“三岐大会”は猛暑の中行われたが、笑顔で健闘をたたえ合う両校球児のさわやかな笑顔が印象的だった。いなべ総合の尾﨑英也監督は「『やり切った』との思いは選手も自分も同じ」とナインの思いを代弁した。
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県高校体育大会の開催検討を始めた当初、コロナ禍での開催をためらう専門部も少なくなかったという。高体連の事務局などとも協議し、競技時間短縮などのルール変更も行った結果、冬に全国大会を予定する競技や、種目特性上早期の大会実施が難しい競技などを除き、36種目中27種目の専門部が開催を決めた。
原則無観客だが、感染状況が落ち着いている時期は、選手と観客の間に一定の距離が保てる施設を使う場合などに限り、保護者ら一部関係者の入場を認めるなど、弾力的な対応を目指す。県高体連事務局では「感染状況は日々変わるが、その中で最大限できることをしていきたい」としている。
環境の変化に戸惑いながら選手らも練習を続ける。社会人野球では今年唯一の全国大会となった都市対抗野球開幕を前に「野球で元気を与えるのが自分たちの仕事」と活動を続ける意義を語ったのはホンダ鈴鹿の丸井健太郎監督だ。先が見えない状況で関係者の模索は続く。