伊勢新聞

2020年12月1日(火)

▼春先に始まった新型コロナウイルスの感染の恐怖に追われ、歳月の流れが今年は速かった。気づいたら今日から12月で、古名の「師走」。年末に仏事で多忙を極める僧侶が東西に走り回るからその名があるという俗説が、コロナ禍で離職を強いられた焦燥感、追われるような心理状態と重なる

▼新たに四日市市の特別養護老人ホームで15例目のクラスター(感染者集団)が発生。別に県庁で初めて職員の感染が確認されたという。各ブースごとに透明シートが垂れ下がり、全員のマスク姿に緊張を強いられ、思わず何度もアルコール消毒を利用したりする県庁の幹部職員が、例え東京出張したという事情があったとしても、感染した。改めてウイルスの脅威を思い知らされる

▼就職氷河期世代を対象にした国家公務員試験の応募者が36倍。「学校を卒業した当時より厳しさを感じる」という応募者の声にも、派遣村とは別の師走の寒さを感じさせる。公務員への採用で民間の採用を促そうとしたねらいがコロナで外れそうらしい

▼諦めた人も少なくないだろうから支援策としては失敗か。国の呼びかけで県も早々に氷河期世代採用を決めたが、国の「ねらい」の方はどこまで認識していたか。採用の経緯をアピールするなど、特に行動を起こした形跡はない

▼採用予定数や職種は受験案内に記載しただけ。応募状況や結果も気づかぬうちに終わった。障害者枠の関係団体からの要望も実施したかどうか。せめてかつての旧国鉄職員採用や、全日空の社員受け入れ程度の積極性はほしかった。もののあわれの季節である。