新型コロナウイルスの感染が全国で急増している。三重県内でも今月に入って感染者が再び増加し、15日には県が定めるモニタリング指標の全項目が措置強化の基準に達した。このペースで感染者が増え続ければ、2カ月ぶりに百人を超える可能性もある。一方、県は「第3波と言われるような状況ではない」とし、新型コロナの特措法に基づく協力要請など、新たな措置を講じるには至っていない。背景には、旅行や飲食の需要喚起策を展開する真っただ中で「経済を止めるわけにはいかない」という事情もあるようだ。
県によると、先月の感染者は56人。5日連続で「感染者ゼロ」の時期もあった。先月15日には、新型コロナ対応の特措法に基づく協力要請を解除。感染状況は「一定のレベル」に落ち着いていた。
しかし、今月に入ってからは連日にわたって感染者が判明し、再び増加に転じているようだ。県内で15日までに発表された感染者は55人で、既に10月の1カ月間に発表された感染者に相当する。
先月下旬に発生した親族同士の会食によるクラスター(感染者集団)の感染者が多くを占めるが、それだけではない。総合病院の医師や中学校の教員、全寮制高校の生徒など、感染者は多様化している。
これとは別に、先月以降は県外に検体を送る方法で少なくとも2人の感染が判明している。この場合は県内の感染者に計上されないため、県の公表よりも実際は多くの感染者が判明していることになる。
これに伴い、県が対策強化の目安として設定しているモニタリング指標も、15日の段階で3つある全ての項目で基準に達した。全項目が基準に達するのは、「第2波」が到来した7月27日以来だ。
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「第3波」が近づいてきたと言える状況だが、県は対策の強化を打ち出していない。これまで感染状況がモニタリング指標に達した場合は県幹部らによる会議を開くなどして措置の強化を講じてきた。
13日の記者会見で飲酒を伴う会食などでの注意を呼び掛けた鈴木知事は「第3波と言われるような状況ではない」と説明。「協力要請を講じたり、移動の自粛を求めたりするわけではない」と語った。
なぜ対策強化の段階ではないのか。新型コロナの対応に当たる県幹部は「感染者が急増しているわけではない」と説明。「三重だけロックダウンするわけにもいかない。今は経済を動かす段階だ」と語る。
一方、関係者によると、県は今後の状況次第で「新たな対策」を講じることも検討しているが、具体的な対策や時期が決まっているわけではないという。感染状況を反映した迅速な対応が求められる。
そんな中、県庁で話題になっているのが「忘年会問題」。各課が開催の可否を検討しているが、ある職員は「うちの課では開くつもりはない」ときっぱり。県の呼び掛けとは裏腹に〝自粛ムード〟を漂わせている。