伊勢新聞

2020年11月14日(土)

▼シャープ三重工場(多気町)に労働者を派遣する下請け企業(松阪市)がフィリピン人を中心に労働者約90人を解雇する問題で、三重一般労組(ユニオンみえ)が雇用確保や生活支援の要望書を県に提出し個別の支援策を求めた。シャープ亀山工場の雇い止めで県と交渉して思い知ってはいなかったか。県は「シャープだけではないので個別には対応できない」

▼目の前に困っている人はいても、困っているのはほかにもたくさんいる。あなただけ助けることはできませんということだろう。ほれ、ここにもこんな人が、あそこにもあんな人がと、あちこちから困っている人を探し出して、困っている人を放っておくことを正当化する

▼目の前の困っている人の救済を突破口に、全体に広げる気はないのである。公平公正のレベルをどこに置くか。県らしくはある。むろん鈴木英敬知事の「戦略的不平等」論とも矛盾しないのだろう

▼平等に扱うことでビジネスチャンスを潰すのが知事の〝悪平等〟で、経営に苦しむANAホールディングスから社員を受け入れて救いの手を差し伸べるのも「空飛ぶクルマ」などのビジネスチャンスを促す。「コロナ禍で労働力の橋渡しをしてきた県の趣旨と合致する」との理屈にも合致する。何の見返りもない解雇労働者を橋渡しするのとは違うのだろう

▼45年前の三重国体では天皇、皇后杯獲得のため有力選手を県、教職員に大量採用したが、三重とこわか国体では、県内企業に採用依頼の行脚を続けている。解雇された外国人の個別対策などには、とても手が回らないに違いない。