2020年11月13日(金)

▼伊勢市の信号のない市道交差点で、横断歩道を自転車で渡っていた79歳の女性が、78歳の女性の軽乗用車にはねられて死亡した。「自転車がいるのは分かっていたが渡るとは思わなかった」と軽乗用車の女性は話しているという

▼ひと昔前に信号のある交差点で目撃した事故を思い出す。時速30キロ程度の低速の軽トラックが交差点少し手前で黄色から赤へ信号が変わったにもかかわらず進入し、赤から青に変わるやいなや横断歩道を渡り始めた自転車をはねた。どちらもかなりの高齢者で、危ない、と思わず声をあげそうになったが、衝突まで双方とも走行方向、速度を変えなかった

▼片や黄信号と思って突っ込み、片や青だと渡り始めたか。ともにのろのろ運転だったが、自動車と自転車である。気づいた時には回避不能だったか。互いに相手を分かっていたが、渡るとは思わなかったのかもしれないと伊勢市の事故で思った。慎重な運転、すなわち安全運転しているという思いが、時に自己中心な暴走をしてしまうのはコロナ禍でもよく聞く話だ

▼車を運転していて自転車に驚くことは少なくない。特に横断歩道付近は戸惑う。止まるかどうか分かりにくく、突然現れたように見えるケースも。自転車の方は、歩行者と同じつもりで駆け抜けていると思えることもしばしば。横断歩道上の自転車は軽車両と同じ扱い、などという聞きかじった知識でこちらが対応すれば事故は免れない

▼伊勢市の当事者2人はどうだったか。よくある高齢者の事故と片付けず、道交法上のあいまい部分として整備、啓発が必要だ。