伊勢新聞

2020年10月31日(土)

▼東日本大震災から10年の節目である来年は「啓発には良い機会」だと議会が県の計画を尋ねたのに対し日沖正人防災対策部長が「新型コロナの影響で昨年は追悼式を開催できなかった」として、開催への意欲を示すとともに「節目となる機会にシンポジウムなどでの啓発を検討している」。議論がかみ合っているのか

▼質問は「県民の防災意識を高める啓発を」ということだろう。答弁は、東日本大震災の記憶を風化させないと言っている。登山口は違っても、目指す頂上は同じということかもしれない

▼前提として、新型コロナの影響がなくなった場合、ということでもあろう。冬季に向けて、欧州では第三波が猛威を振るい、日本も再燃の兆し。その行方によっては来年の今ごろ「今年も追悼式を開催できなかった」という答弁になるのだろうか

▼県教委が11月の「いじめ防止強化月間」の取り組みとして発表したのは、イメージカラーとされるピンク色のマスク着用だった。県いじめ防止条例施行に伴い設置された月間。初回はいじめ防止フォーラムとピンクシャツ運動だった。今年フォーラムがないのはコロナ禍のためもあろう。ピンクシャツ運動に加えてピンクマスク着用を企画したのはコロナ禍に対応したと受け取れる。結果はともあれ、新しい生活様式への模索が見られる

▼フォーラムやシンポジウムは啓発行事の定番だが、効果に疑問符がつけられて久しい。ほかに妙案もなく継続されているケースも多い。思考停止で続けてきた習慣の問題点に気づき、改めるのはコロナ効果だし、新しい生活様式である。