伊勢新聞

2020年10月24日(土)

▼令和元年度のいじめの認知件数が2年連続で増加したことを受けて、県教委は「全国と比べて少ない。認知方法に課題がある可能性がある」。おや、風向きが変わった

▼これまで増加するたび国の指導や条例制定などによっていじめの基準や方向性が変わったのを理由に「積極的に認知する意識付けができた」と胸を張ってきた。過去の減少はいじめの見方の問題で、隠ぺいしてきたのではないというわけだ

▼何しろ先の元県立高生とのいじめ訴訟の和解では、教育長が和解条項にない自分たちに都合のいい解釈を示し物議を醸した。最初は「仲間外れであり、いじめではない」と突っぱねたという報道もある。高1自殺問題ではスマホを見た父親が問い合わせるまで、いじめの存在自体に気づかなかった

▼いずれも「重大事態」に認定されている。「積極的に認知する意識付けができた」とは、いくら厚顔でも言えはしまい。いじめ認知については、中央教育審議会委員などを務めて平成27年に県教委特別顧問になった貝ノ瀬滋氏の同28年1月の県総合教育会議での発言が脳裏に残る

▼「認知は難しくない」という。子どもがよく知っているし、休み時間などに接する教員に情報がいっぱい入ってくる。その状況下でアンケートを定期的にとればいいというのである。それから5年。アンケートはむろん、マニュアルなどさまざまな小道具を備えたが、「重大事態」はするりと通り抜け、改めて認知の「課題」が指摘されている

▼どこに問題があるか。越境入学や障害者雇用問題を出すまでもなく、自明の気はする。