伊勢新聞

<まる見えリポート>津の大門大通り商店街 ホコ天を車道に、市と綱引き

【タイル張りになっている歩行者天国の通り=津市大門で】

三重県津市中心部にある大門大通り商店街。この商店街で歩行者天国となっている通りを車両通行可能にする計画を商店街の店舗でつくる津市大門大通り商店街振興組合が進めている。車を店の近くまで乗り入れられるようにすることで、商店街の活性化につながることが期待される。ただ、車道にするための費用で調整が難航。道路の舗装費用をめぐり、組合と市の綱引きが始まっている。

歩行者天国となっているのは、通称「フェニックス通り」と呼ばれる市道との結節点から津観音まで続く通りと、津観音付近から国道23号までの通り。タイル張りで、一部を除いて車両通行できない。昼間は買い物客、夜間は飲食店などを探す人がこの通りを歩く。

組合は7月の臨時総会で、この歩行者天国を車両通行可能にする特別決議を賛成多数で可決。車両通行には適さないタイルを撤去し、アスファルトで舗装する。タイル張りになっている地域を3つに分けて順番に工事を進め、3年掛かりで完了させる計画だ。

車両通行の可否をめぐる議論は以前から組合でくすぶっていた。大通りを覆っていたアーケードを撤去する前の平成30年1月の会合では「車を通すことはいつでもできる」という慎重な意見もあれば「早急に通すべき」と訴える声も上がっていた。

この2年で何が変わったのだろうか。同年5―6月にアーケードが撤去され、商店街の姿は一変。津観音までの見通しが良くなり、健康維持のために商店街周辺を歩く人が出てきた。一方、テナントはなかなか埋まらず、空き店舗が目立った。

こうした状況の中、車両を通すことで人を商店街に呼び込み、活性化につなげたいという思いがあるようだ。組合の山田和弘理事長(80)は「今よりも客が増えることを期待している。企業を誘致する際、車両が通れないことが障壁になっていた」と語る。

ただ、組合の計画には課題もある。車両通行を可能にするための費用だ。組合によると、タイルの撤去費に必要な約500万円は確保しているが、駐車場の修繕費なども必要なため、撤去後の道をアスファルトで舗装するための費用の捻出までは難しいという。

組合側はアスファルトで舗装する費用の負担を市に求めたい考え。大通りを車両通行可能にした場合、市道扱いになるからだ。市によると、大通りの道幅は約9.5メートル。歩道のある片側一車線の道路に舗装した場合、新たに広い市道が生まれる。

この組合の要望に対し、市側は難色を示している。そもそも、アスファルトだった市道をタイル張りに変えたのは商店街だからだ。平成3年度に商店街が道路占用の許可を市に申請。市の許可を得てタイルに変え、現在の歩行者天国になった経緯がある。

市北工事事務所の担当者は「道路法では道路の占用期間が満了した場合や占用を廃止した場合、占用していた側が道路の現状を回復しなければならないと定められている。車道にする場合は元のアスファルトに戻し、原型復旧させてほしい」と説明する。

2年前のアーケードを撤去する際にも、やはり組合と市の間で費用をめぐる交渉が難航。最終的に市が費用の27%を補助することで決着した。組合は車両通行を可能にする計画を進めるため「通りづくり協議会」を今月16日に開く。新型コロナウイルスの感染拡大で「三密」を避けなければならず、開催が先延ばしになっていた。今回の綱引きでは組合と市、どちらに軍配が上がるのか。