伊勢新聞

2020年10月8日(木)

▼来年度の県の経営方針案と当初予算調製方針が議会に示された。「新型コロナ危機の克服に向けて最優先に取り組む」のは時節柄、当然で、やむを得まい。その影響下で「厳しい財政運営の継続が予想」というのももっともだ。結果、緊要性の低い事業は「厳しく見直す」になるのも仕方ないことだろう

▼何もかもがその通りなだけに閉塞感もまた募る。はけ口の持って行き場がない分、県民の気分はめいるばかりだろう。水力発電事業の売却益をつぎ込む三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)関連だけが順調で、しかも緊縮予算の例外らしい。よほど県民の嫌な気分を吹き飛ばしてくれなければ筋が通らない

▼デジタル技術の普及やSDGs(持続可能な社会)を浸透し「コロナ前より良い社会」を実現させるというのも明るい話題と言えるかどうか。デジタル技術は目下のところコロナ対策の一環で、対面社会より「良い社会」かは不透明。SDGsに至っては具体性に乏しい

▼例えば「第9回太平洋・島サミット」についてである。「新型コロナ拡大で疲弊した地域経済を回復させる一助につなげる」というのは言わずもがなだが、伊勢志摩サミットで「他者を受け入れ共に生きるという、世界平和の実現のメッセージを伊勢志摩の地から発信」などアピールはない

▼参加する太平洋の島しょ国は地球温暖化や気候変動で国土保全の危機を共有し、重要な議題になっている。県も改めてこの問題を考えて寄り添い、励ます施策やアピールはできないものか。我が身に跳ね返ってくる問題でもある。