伊勢新聞

2020年9月28日(月)

▼そわそわ落ち着かない意の「浮き足立つ」が本来の「恐れや不安から」ではなく、「喜びや期待から」と思っている人が約3倍の60・1%。「手をこまねく」も「何もせず傍観している」ではなく誤用の「準備して待ち構える」が多かったが、「国語が乱れている」感じる人は20年前に比べ大きく減った

▼理由は「言葉は時代によって変わる」が最も多く39・0%で「根本的には変わっていないと思うから」が続く。文化庁国語課は「スマートフォンやSNSで発信の機会が増え」寛容になってきているという。時代の変化で誤用が正用に昇格した例はこれまでもあった

▼「職業や住まいを転々とする人は成功できない」という意味で英国で生まれた「転がる石にはコケが生えぬ」が米国に渡り「活動的な人は能力を錆びつかせない」に転じたのは有名。「情けは人のためならず」の日本のことわざも「人にかけた情けは巡り巡って自分のためになる」が「人に情けを掛けて助けてやることは結局その人のためにならない」へ

▼前者は「コケ」に対する米英や世代間の感覚の違い。後者は自己責任論の台頭を思わせ。まさに時代を反映して感心させられるが、「浮き足立つ」「手をこまねく」などは単なる間違い。高齢者の比率が高まる中での寛容の拡大は、年寄りが自信を失っている世相を思わせもする

▼一方、敬語が本来の上下関係の言葉から対等関係へ範囲を広げたのは平成19年。ますます複雑化するとともに乱れを感じるという人も66%に達した。人にどう思われるかを気にして接し方に悩む現代人と言えようか。