伊勢新聞

2020年9月25日(金)

▼4―8月分の県職員の出張件数がコロナ禍で前年同期の約半数。金額では80%(9600万円)減となった。不急の出張を慎重に検討するよう呼び掛けた結果で、取りやめた出張の多くはウェブ会議に切り替えられていたことが「端末の使用状況を踏まえると」分かるらしい。不急はもちろん「不要(な出張)」もなかったと言いたいのだろう

▼県の出張と言えば「カラ出張」を思い出す向きは少なくないだろう。官官接待の費用捻出などの名目で始まり、のちには大半が自分たちの飲み食いに使っていた。正直に申告し直す見返りに罪に問わないというなれ合いの決着で幕を閉じ、課長級以上が一律に返還することで万事をうやむやにした

▼そんなカラ出張が今も続いていたための予想以上の効果ではないかというつもりはない。出張目的が中止になったり、ためらう職員が急増したのだろう

▼菅政権の「デジタル庁」推進に「遅れないのは当たり前。全国に先駆けて推進してほしい」(鈴木英敬知事)。そのため新ソフトや民間の人材導入を検討するという県に、ウェブ会議活用の基盤が果たしてあったかどうか

▼あるいは、出張費の実費支給方針に県職員労働組合(県職労)が猛反対し定額制にした2年前を思い出す向きもあるかもしれない。「職員が出張旅費に自己負担を強いられないよう交渉に臨んだ」と県職労。「自己負担」の中身が関係団体との懇親会の参加費など、という指摘は当時からあった。夜の懇親会などは急減したに違いない

▼コロナ後の新しい生活として出張、出張費も、見直す好機になれば幸い。