伊勢新聞

2020年9月22日(火)

▼国は敬老の日に併せて65歳以上の高齢者人口を発表し、三重県は15日の老人の日に100歳以上の人口を発表した。それぞれ「我が道を行く」と言わんばかり。施策も平行線、二重行政になったりしてはいないか

▼国の高齢者人口は前年比30万人増の3617万人で、総人口に占める割合は28.7%。県は全国に比べコンマ数%高いから30%に達しているか。いわゆる高齢化社会にどっぷり漬かっている状況だが、県の施策が何事も高齢化を前提に展開されているようではない

▼敬老の日の21日は秋の全国交通安全運動が始まった。鈴木英敬知事にコメントに見られる「高齢者」のキーワードは、死者数の半数以上が高齢者であり、対策としては高齢運転者等の安全運転の励行をあげるだけだ。高齢者の人口割合が高ければ死者数に占める高齢者の数も増えるのが道理で、県の高齢者は特別ルール違反が多いのか、自然増か。見極めなければ的を絞った対策はできまい

▼運転免許証返納は進んでいるようだ。県は高齢者の移動手段を確保する四市町の先駆的な取り組みをモデル事業に選定した。成果を県全域に広げる計画。「(免許返納には)移動手段の確保が必要」と知事

▼うち亀山市は乗合タクシーの利便性を高めるAI(人工知能)の配車システム導入だが、同市の市民団体は「事前予約や特定目的地までしか乗車できないなど不便」だと従来のタクシー券配布制度存続を求めた。櫻井義之市長は高齢障害者以外は乗合タクシーに移行したい考え

▼県の施策は、結果的に高齢者の利便性の後退を後押ししかねない。