<まる見えリポート>知事の国政転出は? 自民党総裁選後に注目 野党は三重3区で警戒

【記念碑の除幕式に出席する鈴木知事(右)と二階幹事長=5日、紀宝町鵜殿で】

菅義偉官房長官の当選が濃厚な状況となっている自民党総裁選後に注目が集まるのは衆院解散の有無。三重県内では鈴木英敬知事の国政進出が取り沙汰されるが、最も出馬の可能性が高いのは岡田克也元外相の三重3区。仮に鈴木知事が出馬すれば与野党対決の象徴的な選挙区となることは間違いない。鈴木知事周辺に目立った動きはないが、野党は「岡田の地盤で負けるわけにはいかない」と気を引き締める。

「鈴木知事が二階さん(=俊博自民党幹事長)から次期衆院選への出馬を打診されたそうだ」。安倍晋三首相が辞任の意向を表明した直後の週末、そんなうわさが野党議員らの間で飛び交っていた。

鈴木知事は平成21年の衆院選に旧三重2区から立候補したこともあり、国政転出のうわさはことあるごとに浮上するが、今回は少し具体的。「三重3区」という具体的な選挙区が付されていた。

それから1週間が過ぎた5日、鈴木知事と二階氏は紀宝町内で開かれた記念碑の除幕式に出席。2人そろって開始直前に会場入りし、向き合ってくす玉を割る場面は両者の良好な関係を連想させた。

また、関係者によると、鈴木知事は11日に首相官邸で安倍首相と面会した。「お世話になった総理に感謝の意を示すこと」が目的だったというが、ある県議は「むしろお願いだったのでは」と疑う。

安倍首相との縁が深い鈴木知事だが、菅氏との関係もそれに劣らず。鈴木知事が出馬した衆院選では菅氏が党選対委員長を務めたといい、平成28年の伊勢志摩サミットでも両者の関係は深まった。

それもあってか、県庁内でも鈴木知事の国政転出はもっぱらのうわさ。職員らは「今回を逃せば政治家としての芽はない」「早めに表明してくれないと仕事が手に付かない」などと口々に持論を語る。

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前回の知事選で9割に迫る得票率を誇った鈴木知事だが、仮に三重3区で出馬すれば、岡田氏の強固な地盤に対抗するのは並大抵のことではない。自民党本部による相当な「テコ入れ」も想定される。

野党関係者らは鈴木知事の国政転出を警戒。ある県議は「岡田氏にとっても鈴木知事が出れば強敵。無所属での出馬を余儀なくされた前回衆院選にも劣らぬペースで準備にいそしんでいる」と明かす。

一方、鈴木知事の国政転出が与える影響は、三重3区にとどまらない。各地で「玉突き選挙」が実施される可能性があるからだ。鈴木知事の判断が、いわば県内政界再編に向けた「トリガー」となる。

県内政界では、鈴木知事の後任として、中嶋年規前県議会議長や前葉泰幸津市長らを推す声が上がっている。さらには津市長の後任を狙う市議も。早々にも関係者らの「算段」が加速しているようだ。

とはいえ鈴木知事の周辺で国政転出に関する情報が出たわけではなく、後援会にも今のところ目立った動きはない。鈴木知事の「本心」をつかむ以外に、今後の県内政界を見通せる方法はなさそうだ。

8日のぶら下がり会見で新首相誕生後の出処進退について問われると「知事としてであれば、党総裁と党役員、組閣には興味津々です」と語った鈴木知事。果たして「政治家としての興味」やいかに。