▼自民党総裁選の党員・党友投票省略について鈴木英敬知事は「一般論として広く党員から意見を聞いて投票するのが望ましい。自民が野党になったときに支えたのは党員。意見を聞くのは大事だ」
▼自民党の野党時代とは平成21年の民主党政権誕生からの3年間を指すのだろう。経済産業省の官僚として何をどう見てきたかは知らないが、当時は国民に自民党政治への不信感が強く、政権復帰への展望は開けなかった。マスコミに登場するのは民主党政策へのコメントだけ。党員への政策浸透以外、これといった活動がなかったのである
▼復帰が民主党政権への失望感だったのは周知の通り。党員党友投票で執行部の思惑ががらりと変えられた記憶はあっても、党員に支えられたという気はあるまい。予想外の菅義偉官房長官後継への流れである。閣僚としての実績は賛否両論あるふるさと納税ぐらいしか思い浮かばないが、派閥の論理で無派閥の菅長官があれよあれよという間に担ぎ上げられるのは皮肉であり、象徴的でもある
▼かつてリクルート事件で総辞職した竹下内閣後の総裁候補に、伊東正義党総務会長が祭り上げられた様子によく似ている。人材払底が一因でもあったが「本の表紙を変えても駄目だ」と固辞した。菅長官は、安倍晋三首相さえ口にしなくなったアベノミクスの継承を政策の柱にする
▼党員の思いとは違う気がするが、知事は「地方への思いに期待」と事実上の支持表明。拉致被害者救出を誓うのは菅氏だけだとし「国境を越えた人権侵害の解決にも期待している」。通じるものはあるようだ。