伊勢新聞

2020年9月7日(月)

▼新型コロナウイルスの1日当たりの新感染者が、クラスター(感染者集団)発生の鈴鹿厚生病院の23人を中心に25人に。先月5日の過去最多を更新した。鈴木英敬知事は「8月上旬の状況に比べれば県全体で感染が大きく広がっているわけではない」

▼県緊急警戒事態宣言を出した8月3日直前も、5月の第1波の状況とは違うと言い続けた。同宣言後も「県全体で大きく広がっている」という見方は示していない。実はそうだったのかと、当時の不安がまんざら根も葉もないことではなかったと顧みる。今度の知事の見方が率直か方便か、心中をのぞいてみたくもなる

▼交通死の非常事態宣言なら2、3カ月の期間は普通。正体不明の新型コロナを相手にして当初2週間の宣言期間は及び腰の印象で、第2波当初は、感染者数発表を知事から事務方へ移管していた。警戒事態宣言を解除した8月31日は、12人の新規患者と特別養護老人ホームのクラスター(感染者集団)が同時発表で「新規感染者が減少したため」の宣言解除理由を形骸化した

▼警戒対象もめまぐるしく変わる。第1波前夜は外国帰り由来とし、次いで首都圏、名古屋圏。2波でも継続されたがやがて家族となり、外国人となった。警戒宣言解除後は病院・施設関係が大半という。職業を「会社員」とミスリードした感染者の勤務先の診療所がクラスターと認定されたのは8月中旬だ。認定する事態になったためミスリードを訂正したと勘ぐりたくもなる

▼知事は「過剰に不安にならず」と呼びかける。正確な情報提供が、最適な手段である。