伊勢新聞

2020年8月28日(金)

▼北川正恭氏が知事に就任した直後のみどりの日にちなんだ行事で激怒したという話がある。知事の会場入りとともに出席者が起立して拍手した演出に、大会の主役は一体誰なんだと事務局職員を叱り飛ばしたというのである

▼公約とした「県民サービス」について、こう語っていた。県職員が言う県民サービスとは、自分たちの仕事を優先し、余力があったら県民のために何かをすることを指すが、本当のサービスは、まず県民のためを考えることだ、と

▼県議3期、衆議院議員4期を通じ公務員を見てきた視点は、官僚出身知事6期後として新鮮だった。県が新型コロナウイルスに感染した医療関係者を「会社員」と発表したのに続き、特別支援学校生を「高校生」と発表していた

▼「会社員」と偽りの発表をしたのは、鈴木英敬知事がSNS(会員制交流サイト)で拡散しているデマや誹謗(ひぼう)中傷の書き込みを「絶対にやめて」と呼び掛けた翌日だった。特に気に掛けていた医療関係者への書き込みの拡散に結びつきかねない公表にためらったのではないか

▼「特別支援学校生」については、感染症対策本部が県教委特別支援教育課に相談した上でという。「それはまずい」という回答を期待してのことであり、責任の分散化を図ったということだろう

▼事後報告に県教委幹部が「将来的に学校内で感染者が出れば、かえって誤解を与える」と反発して訂正となったらしい。感染症対策本部の意図を察知して、先手を打ったと考えると分かりやすい。県民の感染予防のためという視点はない。変わらぬ職員気質と言えようか。