2020年8月22日(土)

▼県教委のいじめ対策審議会が3月に調査報告書をまとめたばかりの県立高1年男子の自殺問題が県の「いじめ調査委員会」で再調査することについて、県教委の木平芳定教育長が「(県教委の調査で)遺族の気持ちに応えることができなかったことを申し訳なく思う」

▼県の委員会には「遺族の思いに寄り添ってもらえる調査をしてもらえれば」。鈴木英敬知事も「ご遺族の気持ちに応え、できることをしようと判断した」

▼いじめの調査報告が再調査を迫られることは全国でもままある。いずれも調査の不備や結論への違和感が理由だが、県の場合は「遺族の気持ちに応えるため」の再調査という全国的にも珍しい風変わりなケースということか

▼加害者側の聞き取りがないことを遺族が不服としたとされたが、木平教育長は「再三要請したが、生徒や保護者に応じてもらえなかった」とちゃっかり釈明している。欠陥報告ではないのか。なにぶん報告書が公表されず、県の委員会が乗り出すまでの経緯も不明

▼まさに伏魔殿の中を手探りで進む気分だが、県教委の報告は「いじめが自殺した原因の一つ」。では、ほかに原因があるのか。「家庭にも問題」と含ませるのが全国で遺族に反発を買う例である

▼県総合教育会議で、中央教育審議会委員などを務めた貝ノ瀬滋特別顧問(当時)はいじめの認知は簡単だとし、アンケートに教師の注意深い観察が加われば完璧だと語った

▼自殺して数カ月後、保護者からスマホの記録を見せられるまで、県教委が「重大事態」に気づかなかったのはなぜか。欠陥は報告だけかどうか。