伊勢新聞

2020年8月15日(土)

▼車いす生活だった三重県四日市市の70代女性が先日、亡くなった。伝聞情報だが、玄関先で倒れているのが発見された。熱中症の可能性が高いというが、どこからも、そんな発表はなかった

▼夫婦二人暮らし。夫は認知症が進んでいた。本人は元気で、定期的に通院もし、アクティブでわがまま。夫の愚痴なども声高に話し、周囲に面倒くさがられ、愛されていたという。突然の最期がどんなだったのか、病院関係者も分からず、空虚感が流れた

▼連日の猛暑で、熱中症で搬送される人が続くが、本紙が伝えた死者は2人。実際は、数字には表れないということだろう。鈴木英敬知事が昨年、熱中症への注意を呼び掛けたのは暑さが本格化する前の6月12日だった。直前の同5月、桑名市の小学生7人が救急搬送されたこともあるのだろう

▼今年は、夏に向かって一向に衰えを見せぬコロナ禍と合わせて、初期症状が似通う熱中症対策が懸念されている。コロナ過敏症になっている医療機関も少なくない中で、格段に重症化が早い熱中症患者の受け入れ体制に問題はないか

▼鈴木知事が今年、熱中症について触れた記憶がない。それどころではないのかもしれないが、だからこそ、目配り、気配りが必要だと言えなくもない。公式非公式に死者が出ているのである。コロナ禍で、受け入れていない医療機関の経営悪化も救済しようと知事は奔走しているが、熱中症体制などに組み込めば、県民の理解もまた違ってくるのではないか

▼県としてはホームページで熱中症への警戒を促してはいる。「予防を呼びかけ合うことで、発生を防ぐことができます」―。だそうである。