伊勢新聞

2020年8月14日(金)

▼一ケタ台が続いて再び二ケタ台へ。不安な県民心理解消にはまだほど遠いが、県はクラスター(感染者集団)に認定した津市の診療所の感染者らを「会社員」と公表してきた。ホームページを訂正するとし、県医療保健部は「(会社員という表記は)無理があった」

▼鈴木英敬知事が「事実に基づいた冷静な対応のお願い」のプレートを掲げ「大切な信頼関係や社会のつながりを壊さないために」とSNS(会員制交流サイト)で拡散しているデマや誹謗中傷の書き込みを「絶対にやめてほしい」と呼び掛けたのは4日。その数日後、県は事実といえない情報を流していた

▼百人余の訪問者のうち検査を受けるのは3人で県は「患者らに濃厚接触者はいない」。診療所の名称を発表しないのは「訪問者は把握している。感染拡大の観点から公表して広く呼び掛けるまでには至っていない」。これらを信用する関係が壊れていなければ幸い

▼山中伸弥京大教授ら医療関係者4人が4月、日本新聞協会に差別・偏見などへの要望書を届けた。5月のオンライン会合で、院内感染に対する犯人捜しの報道について「病院が積極的に検査をしなくなる」と批判。報道の断片をつなぎ合わせ、SNS情報が拡散されるとも

▼協会、民放連はSNSと同一視をしないことを希望。差別や中傷を許さないとの共同声明を発表し、病院には公益性、説明責任があり「早期に情報を公開し、淡々と受け入れる対応が必要」であることで医療者側の理解を得たと協会編集委員会代表幹事が報告している

▼デマや中傷がなぜ起きるか。県も顧みていい。