伊勢新聞

2020年8月5日(水)

▼元県議会議員らでつくる三重の会が先に開かれ、鈴木英敬知事がゲストに招かれ、策定したばかりの新型コロナウイルス感染防止と経済の両立を図る「“命”と“経済”の両立をめざす『みえモデル』」の冊子が配布された。「経済との調整は四日市公害裁判で否定された考え」と、出席した萩原量吉元県議は言う

▼昭和42年制定の公害対策基本法には環境と経済の調和条項があり、被告企業らの主張の根拠にもなった。判決は「安全の考え方に経済性は度外視すべし」。現役教師だった萩原元県議の脳裏に強く刻まれ、県議出馬の一因にもなった

▼知事は環境保全と地域振興の二足のわらじを履いているから、公害撲滅は不可能と切り捨てたのは、四日市海上保安部で四日市港への工場排水垂れ流しを摘発し(同45年)行政と産業界の癒着にメスを入れ、公害Gメンと称された田尻宗昭。県職員を相手にせず、県幹部に「上級官庁を鼻に掛けて」と憎まれた

▼公害運動に長年取り組んできた萩原元県議の目には『みえモデル』は四日市公害の教訓が生かされていないと映った。同モデルについて、県は「感染を抑えこむことができている今こそ、感染防止対策を徹底しながら、経済の再生・活性化を図るという、新たな挑戦に着手しなければなりません」と説く。すでに破綻している

▼感染者急増に加え津市のホテル「都シティ津」も無期限休業。知事は「緊急警戒宣言」を出し「緊急事態宣言の一歩手前」。「もうはまだなり、まだはもうなり」は相場の格言。底値や天井を見極める困難さを示すが、一歩とは?