▼1日当たり新型コロナウイルス感染者が過去最多の11人となったが、鈴木英敬知事は特にコメントも出さなかった。最多とはいえ過去を1人上回っただけ。百人超えの前日は会見したのだから、まあいいじゃないか、ということか。新しい対策の用意もないし、ということかもしれない
▼報道機関の一員に連なる者として、鈴木知事に感心するのはほとんど毎日、ぶら下がり会見に臨んでいることだ。田川亮三元知事の定例記者会見は毎週火曜日だったが、発表事案のない時は中止してもいいのではないかと提案されたことがある。週1回、トップの考えを聞くことが大事だと拒否した
▼続く北川正恭元知事の時、1回減の月3回を強行された。会見では微妙な内容になると「ノーコメント」がお決まりで、「角度を変えて」と言っても「それも含めてノーコメント」と、取りつく島がなかった。県の情報公開度を全国トップクラスにし、のちマニフェスト(政権公約)を提唱した表向きとの落差が大きかった
▼会見が為政者にとって負担なのは、だからよく心得ていた。安倍晋三首相が姿を見せないのも、森友・加計、桜問題が質問されるので気が重いからだと言われている。県民に顔の見えるリーダーを信条にした知事も、誰もが通る道へ踏み込もうとしているのかもしれない
▼医師らが委員の対策協議会で、知事は「感染を抑止し、経済に支障がないようにしていくことが大事」。感染抑止だけを考えることに異を唱えたと言えよう。二兎を追う者は一兎をも得ずは、英国のことわざ。日本ではアブハチ取らずという。