伊勢新聞

2020年7月29日(水)

▼田川県政時代、知事会見の直後に企画調整部長(当時)が会見を開いたことがある。何でも知事の発言に誤りがあったそうで、知事の了解を得て部長会見になったという。が、どこがどう誤ったのか、明確に指摘もされなかったこともあり、よく分からなかった。知事発言を訂正するのはなかなか大変だという記憶だけが残った

▼だから、というわけではないが、新型コロナウイルス感染拡大の予兆を察知して措置を講じるための判断基準として、県が独自に定めた「モニタリング指標」が全項目で上回ったにもかかわらず、医療保健部は「県内で広く感染が広がっている状況ではない」という鈴木英敬知事の前日の会見発言を維持した

▼数値が基準を上回っても決められた措置を講じぬのなら何のための指標か。未知のウイルスを対象にした指標が、想定外の変化で現実に当てはまらなくなったなら、指標を改定すべきだが、指標によって起こすべき行動を定めた感染拡大防止指針の方を見直してお茶を濁すらしい。移動自粛や休業要請をしない根拠に用いられる役目を果たし、指標は日の目を見ないまま役割を終えたということか

▼菅義偉官房長官も「4月の緊急事態宣言当時とは状況が異なる」として「(同宣言を)再び発出し、社会経済活動を全面的に縮小させる状況にはない」と言っている。知事も思いは同じということだろう

▼発症者が増えていることは無症状者や治癒者も増えていることにならないか。「広く感染が広がっている状況ではない」と断定する根拠を示し、不安高まる県民を安心させてもらいたい。