伊勢新聞

2020年7月28日(火)

▼新規感染事例数と新規感染者数が県の定める指標を上回ったが、鈴木英敬知事の判断は「すぐに外出自粛や休業要請をする状況ではない」で、上回っていない四日前と同じ。急場に直面して何とも頼りにならない指標だが、こちらにAⅠ(人口知能)が判断するシステムは構築できなかったか

▼もっとも、限られた我が周辺だけの話だが、知事の判断を額面通りに受け取る向きはいない。緊急事態宣言明けを待ってましたとばかりに国が打ち出した観光支援事業「Go Toトラベル」に知事も「ありがたい」と即応し、県内での宿泊を半額にする「みえ旅プレミアム旅行券」などのキャンペーン促進策を繰り出した

▼第二波対策を講ずる段階ではないと言い続けた菅義偉官房長官が直前の17日、東京除外を発表して謝罪。呼応するかのように同日、知事も促進策を延期し「感染防止対策の徹底と観光業の再生の両方に全力を挙げたい」。矛と盾を売り歩く中国故事の商人を我が周囲は連想し、矛をより売りたいのだと笑うのである

▼国はキャンセル料など、さらに足元がふらつくが、知事は持ちこたえる。緊急事態宣言解除後は感染者発表は事務方に委ねるとしていたが、「二日間で七人」「中学講師を含む」の〝非常事態〟にたまりかねたか、臨時記者会見を開いた

▼移動自粛の言葉は使わず「極力控えて」。「市中感染が広がっている状況ではない」の評価は変えず、警戒感の形容詞に「これまでより多く」「大変に強い」

▼「これまで」とは、さて、いつからか。第一波は天災、第二波は人災―。世間の評価である。