伊勢新聞

2020年7月25日(土)

▼今回の4連休は、スポーツの日と海の日が東京オリパラのために移動してできたことを忘れていた人も多いのではないか。オリパラの延期で史上、まれに見る間の抜けた「国民の祝日」となった

▼山の日を含め、移動に政府内が混乱したのも今は昔。酷暑対策が議論されていた記憶も忘却のかなた。熱中症注意報が繰り返され、運動や不要の外出を控えるよう呼びかけられ、マラソンの出発時間が午前7時から六時に繰り上げられた

▼酷暑対策は、1年の延期でどれほど充実したか。IOC(国際オリンピック委員会)がマラソンと競歩の会場を札幌へ変更したのは10月。直前の女子マラソン選手権(ドーハ)で、深夜開催にも関わらず四割が途中棄権したことに衝撃を受けたためとされるが、小池百合子東京都知事が猛反発したことは記憶に新しい

▼マラソン区間の大半を遮熱性アスファルトに張り替えるなど約300億円の酷暑対策が水泡に帰したのが反発の一因と言われるが、IOCの危機感からはほど遠かったのだろう

▼コロナ禍はオリパラを巡る問題もまた、浮き彫りにしたが、前回東京五輪の開会日を記念した10月10日の体育の日が7月に移動することに誰も疑問をはさまない。来年に向けて粛々と準備が進む。巨額の追加予算とともに

▼イギリス人は歩きながら考える、という。フランス人は考え終わると走り出す。日本人への言及はないが、歩き出すと止められない―になろうか。五輪も、国体も。「立ち止まって考えてほしい」という鈴木英敬知事の注意喚起は、コロナのための移動だけのことではあるまい。