伊勢新聞

2020年7月23日(木)

▼将棋の藤井聡太7段の棋聖戦第2局中盤で、守りの駒とされる金を最前線に押し上げた五四金が、控室の専門棋士らを驚がくさせたという。AI(人工知能)で調べても最善手とは出ない。AI世代とされる藤井棋聖は、だから差してみたい手だったと話している

▼大山・升田時代に将棋を覚えた一人として、羽生善治9段は驚きだった。米長邦雄永世棋聖が「羽生世代」と呼ばれる少年らのコンピューターを駆使した研究会に交じって学び直し、将棋の神様から「最年長名人」のご褒美をもらったと語っている

▼その羽生9段が、デビュー当時はソフトも棋譜のデータもなかったと述懐している。藤井新棋聖は整備されたAIに幼少のころから親しみ、前世代の天才を軽々と超えていく。AIが優劣不明と判定した局面の研究をさらに進め、実戦で使ってみるのが強さの秘密でもあるようだ

▼三重県がAIを活用した児童虐待対応支援システムの運用を始めた。実験で、虐待の通告から初期対応終了まで最大16時間短縮されたという。いったいどれだけかかっていたのか。過去例だけでなく、ベテラン職員の知見も反映させるという。それなくしては百害あって一利もあるまい

▼平成24年度の2件の虐待死が導入の契機。産後うつの母親の精神状態を見誤った事件で、ゼロ歳児の身体の認識や市町との連携不足が指摘された。「素晴らしい職員もいるが、多くのケースを抱え、人事異動もある。経験が浅い職員もAIの支援でしっかり対応できる」と鈴木英敬知事

▼AIはどう使いこなすかだが、ちと心もとない気もする。