伊勢新聞

2020年7月21日(火)

▼五行思想を知らなくても、土用の丑の日は知っている。土用の丑の日は知らなくても、この日にウナギを食べることは知っている。梅雨は明けきらぬが、20日の津市はこの夏一番の蒸し暑さだった。土気盛ん。暑気払いに夏バテ、食欲減退防止のウナギを食べると言えば、何となく合点がいく。21日は土用の丑の日

▼ウナギを食べる習慣の起源は諸説あるが、最も有名なのが江戸時代の蘭学者、平賀源内説。夏に需要の落ちるウナギ屋から相談を受け、店先に「本日丑の日」と書いて張るように勧めたら大繁盛し広がったという。「ウ」の付くものなら瓜でも馬肉でもよかったが、ウナギに集約されたともいう

▼ウナギを食べること自体は万葉の時代にも見られるという。ざっと1200年の伝統食だが、絶滅危惧種などに指定されるなど、環境は一変した。シラスウナギの国内漁獲量は水産庁調べで昨年の漁期3・7トンだが、漁獲のある24都道府県の報告書は計2・2トン。実に40%に当たる1・5トンが出所不明の未報告漁獲という

▼何だが象牙の密猟と日本の市場との不可解な関係を思わせる。高価で取引される日本市場目当てに、過剰な漁獲や不透明な取引が世界を舞台に横行し、ダムなど河川構造物がウナギの生息環境を悪化させているという。マグロや森林資源などの国内持ち込みに指摘される問題が、ここでも起きているらしい

▼今年は、最盛期には比べるべくもないが、近年では久々の豊漁という。中国、台湾もそうで、高騰続きだった取引価格も低下し、市場は活気らしい。うたかたの夢といえようか。