「2020年三重県高等学校野球夏季大会」(県高野連主催)が開幕した。新型コロナウイルスの影響で中止になった硬式野球の「第102回全国高校野球選手権三重大会」に代わる三重県独自の大会。感染症対策に加えて夏休み短縮の影響で日程が限られる中、特に今大会で部活動を引退する高校3年生に晴れの舞台を準備すべく関係者が日々奔走している。
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独自大会開催に向けて最初にクリアしなければならなかったのが会場問題。今年は津球場公園内球場が三重国体に向けた改修工事に入るため例年より1球場少ない。当初ベスト8が出そろったあたりでの打ち切りも検討されたが、最終的に3日間の予備日を含めた13日間分の球場を確保し、決勝までできる見通しが立った。
県高野連の鵜飼治理事長は「高校生のためにと確保していた球場を譲っていただいた。さまざまな人たちの協力のおかげ」と感謝。開幕後も長引く梅雨の影響で球場によっては予定していた試合ができない日もあったが、試合日と会場を変えるなどして調整し、19日現在、順調に日程を消化している。
組み合わせ決定に際しては、これまで秋季大会と春季大会の結果を基に決めていたシード校を設定しない代わりに、考査日程で参加校をグループ分けして、グループ別に抽選を行った。休校による選手の体力低下も踏まえて延長10回からタイブレーク制を採用。投手には1週間500球以内の球数制限を導入した。
3年生を中心に、例年より5人多い最大25人のベンチ入りを認める一方、試合中は通路や一部スタンド席を使わせて密集をさける。応援席は控え部員と3年生の保護者など一部の関係者に限定して開放。入場者全員にマスク着用、検温を義務づけ、試合が終わるたびチーム関係者、保護者らにも協力を仰ぎベンチ、スタンドを消毒している。
一度は感染が落ち着いた新型コロナだが都市部を中心に再流行の兆しがあり高野連側も気を揉む。「危機感を持っている」と話す岩出卓会長は「感染者を出すことのないよう、引き続き気を引き締めていきたい」と話している。
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甲子園につながらない大会だが、頂点を目指してひたむきに戦う姿は変わらない。初戦で昨年秋の県大会優勝の近大高専に逆転勝ちした津工の竹内伸監督は「選手たちがかわいそう」という風潮に疑問を呈す。昨年秋中勢地区予選で敗退。春以降コロナ禍で思うように練習を積めなかったが「強豪校も同じ条件」と励まし続けて勝利を呼び込んだ。
昨年秋の県大会で準優勝した津商の宮本健太朗監督は「負けていい試合は一つもない」。学年関係なくベストメンバーで大会に臨む意向で、初戦の津田学園戦は2年生の出口慶人投手が完投勝ちした。「1番を目指してベンチ外メンバーを含めた全員が自分の役割を果たす。それがあって次への新しいスタートが切れる」と話し、チーム一丸で勝利を目指す意義を強調する。
3年生中心のメンバー構成ながら菰野の戸田直光監督も「思い出づくり」の大会にすることには否定的だ。県独自の大会を3年生だけで戦うと決めた上で「情けで試合に使うことはない。やる気のある選手だけ残れ」と3年生にゲキを飛ばした。大会期間中は1、2年生全部員が応援に駆けつける予定で「3年生の姿を見て(来春の)センバツに向かって欲しい」と願っている。