伊勢新聞

2020年7月18日(土)

▼国が旅行需要喚起策「GoToキャンペーン」から東京都を除外したことに伴い、鈴木英敬三重県知事も割り引き上乗せの延期と、宿泊割引券「みえ旅プレミアム旅行券」の6府県という枠組み変更も示唆した

▼キャンペーンそのものは「ありがたい」としつつ「観光事業者への聞き取りでは、期待と不安の声が半々」だったという。聞き取りの時期はいつだったか。不安の声に耳を貸さず、渡りに船とキャンペーンに乗ったのだとしたら、いささか軽率の気がしなくはない

▼東京都の感染拡大に検査を徹底しているからだと言い続けた菅義偉官房長官が、一転して東京除外に踏み切ったことを陳謝していた。またも安倍政権の方針転換かという思いとは別に、福島原発事故での当時の枝野幸男官房長官を思い出す。連日の会見で最もパワフルと評価されたが、その中で「直ちに人体や健康に影響を及ぼす数値ではない」と繰り返した

▼深刻な状況だったことは徐々に明らかになる。政府発表への不信が国民に浸透した。発表を垂れ流して国民をミスリードしたと報道機関も大きく信頼を損ねた。今回はウイルスが相手。人間の都合、日程が通用するものかどうか

▼V字回復は大きな流れの中で、のちに転換点が分かるもので、指標や基準によって、翌日から手のひらを返したように施策を変更していいものではあるまい

▼安倍晋三首相がコロナ禍の前段で言った決意である。その言葉通りにしてやりたいというそんたくが森友・加計や桜問題など、政権各層にゆがみをもたらした。知事もやすやす乗ってしまったのでなければ幸い。