2020年7月14日(火)

▼「多額の税金を投じた対策費は誰が負担するのか」というのが、有害物質PCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む油流出の処理で、県が代執行した総工費85億円のうち6億円の解決金でコスモ石油と調停が成立したことに対する本紙『まる見えリポート』の問題提起である。答えの一つについて鈴木英敬知事は言う。「正直者がばかを見ることがないようにしなければならない」

▼「我々の主張も認められた結果の調停」だと、民事訴訟の調停みたいなことも言うから、ばかは見ていないと言いたいのか。「正直者」とはむろん県ではない。納税者の県民である。知事は調停の内容について「地元にご説明しながら適切な対応をしていく」というが、地元だけの話ではなく、県民の負託に誠意を尽くしたかの問題である

▼「民事訴訟も検討はしたが、敗訴する懸念があった」とか、12月の調査で投棄者が特定できる可能性があり「まだ調査は終わっていない」など、職員の話は公平・公正が基本の行政機関として互譲が原則、つまりあいまいな決着が前提の民事調停を選択したことに疑問は残る

▼県の代執行事業では、指名競争入札のみ採用していたり、設計単価を特定の三社平均の見積もりで出すなど、恣意的疑いが2月の包括外部監査で指摘された。代執行の債権回収は一代限りの解釈で、相続されてしまった場合は話し合いで一部の回収にとどまっているとして再検討も求めた

▼有識者会議からの提案を受けることも有効としている。あいまい体質があいまいな解決法を選んだか。正直者はばかを見たことになる。