伊勢新聞

2020年7月11日(土)

▼紀伊半島3県知事会議で、議題のトップが新型コロナウイルス感染症対策だったのはさもありなんだが、中身は売り上げ減の観光産業支援と、受診控えで収益悪化の医療機関救済策。いずれも鈴木英敬知事の提案で、第2波警戒ではないようだ

▼思えばコロナ禍以来、知事の医療機関への気遣いは細やかで情理を尽くしている。報道機関に対して個人攻撃禁止を求め、情報提供停止の脅しをかけた時も、拡散するデマとして例示したのは「医療関係者らの陽性」だった

▼「県民の皆様へお願い」で「医療従事者と家族に対する偏見や差別につながる行為は断じて許されません」と語気を強めた。入院患者が計44人、ピークが32人で全員退院した5月末、知事は「献身的に対応された」と医療関係者への「心からの感謝」を忘れなかった

▼感謝の気持ちとして医療従事者へ最大5万円相当のカード贈呈も決め、感染の恐怖に加え「偏見や差別を受けたことを考えると当然」。そして3県知事会議では「コロナ感染者を受け入れていない一般のクリニックや病院への支援が少ないと感じる」というのだ

▼なぜ医療機関だけがという気にならないか。緊急時に備えた医療体制の必要性を改めて痛感したということだろう。国からのクルーズ船患者受け入れ要請に応えてくれた恩義も感じているか

▼4月の機構改革で、医療政策課を新設。厚労省医療介護連携政策課医療費適正化対策室長補佐を課長に招いた。外来医療計画を策定し医療再編を進める地域医療構想調整会議を所管する。多少の後ろめたさもあるのかもしれない。