伊勢新聞

2020年7月9日(木)

▼小池百合子氏の東京都知事選再選で、衆院への転出が改めて自民党や政権の脅威として語られているという。早くも衆院選転出の話になるのが東京都の知事というものか、あるいは小池氏の持つ政治家としての特質か

▼かねて衆院への転身が語られてきた鈴木英敬知事のことが改めて想起される。任期まっとうを繰り返してきたせいか、このところ記者会見などでも取り上げられることは減った。都知事選前の6月25日会見は、久々である

▼出馬うんぬんではなく、三重民主連合の岡田克也会長が9月解散論を展開したことを受けてその感触を問われた。知事は「どうですかね。総理の専権事項なんでどうご判断されるか」としつつ、コロナや経済状況、改造人事などによるという見方を示した

▼「総理の専権事項」という言葉は5日に菅義偉官房長官が早期解散に否定的な二階俊博幹事長に対応する形で口にし、その真意が取りざたされたばかり。れいわ新撰組の山本太郎代表が3年前の菅長官の同様の発言に対し、質問趣意書を出している。憲法が明示する解散は任期満了だけであり、「総理の専権事項」は、憲法論では異論がある

▼憲法は「衆議院を解散すること」を天皇の国事行為とし、国事行為は内閣の助言と承認をもって行うことから内閣を率いる総理大臣が実質解散権を行使できるとする。天皇の形式的行為を首相の実質的権利に置き換えた形で、正確とは言えないが、菅長官の発言は「このような認識の下で行われた」というのが答弁書だ

▼むろん鈴木知事も、そんなことは百も承知の発言ではあろうが。