伊勢新聞

2020年6月29日(月)

▼桑名市の員弁川河川敷に猛毒PCB(ポリ塩化ビフェニール)を含む油が流出した問題で、県は原因企業と推認したコスモ石油が6億円支払うとする四日市簡裁の調停案を受け入れる理由について「公平中立な判断のため」と説明した。法解釈が誤ってはいないか

▼民事調停は調停委員に公平中立が義務づけられるが、目指すのは両者の合意点を見いだすこと。調停案も互譲が求められ、公平中立は必要条件ではない。民事訴訟の和解案と最も異なるのが互譲と公平中立のどちらを基準にするかだといわれる

▼県の「推認」というのが何ともあいまいな判断で、原因企業がコスモ石油だと確定できずに名前を公表したのなら名誉毀損にも相当しようし、公表するだけの自信があるというなら応分の負担は求めなければなるまい。除去に85億5千万円費やしている中で、6億円で合意した理由は何か、県は県民に説明する責任がある

▼コスモ石油は県の調べに「油分を含んだものは埋め立てていない」と言ってきた。その後のボーリング調査などを経て、県は原因企業と推認し、四日市簡裁に民事調停を申し立てた。話し合いの場に引き出すことが目的とされたが、85億円もの規模の係争をまとめる場としては不適切な選択ではないか

▼民事調停は内容を公表することが禁じられている。県民に説明しないことが前提というのは、地方自治体の取るべき手段ではあるまい。まして、全体の費用の10分の1にも満たない金額での合意である。大目に見たか、あるいは難癖をつけて6億円をもぎ取ったとでも言うのだろうか。