伊勢新聞

2020年6月27日(土)

▼組合長が恐喝未遂容疑などで逮捕された桑員河川漁協組合に、桑名市の歴代の上下水道部長が就任ごとにあいさつに出向いていたことについて、現職の部長が「本来市が一方的に頭を下げてあいさつに行く理由がない」。逮捕容疑についても、同組合に工事の許可を求める法的な必要性はないと、市は言っていた

▼本来理由のないあいさつを市は四半世紀以上続け、開発業者が要求された逮捕容疑の「寄付金」同様に法的必要性のない税金を「補償金」「環境保全協力金」名目で支払ってきた。言うこととすることに違いがあるなどは、市職員としてさほど支障のあることではないのだろう

▼県警の捜査関係者もまた、なかなかにユニークだ。刑事ドラマでは「疑うのが仕事」というのが決まり文句だが、捜査関係者は「市に何か見返りがあったわけではないが、悪しき慣習がまかり通り、市は組合に過剰な忖度をしていた」。疑うことをしない素直な性格なのだろう

▼寄付金名目で要求すると恐喝未遂容疑になり、補償金や環境保全名目で受け取ると「悪しき慣習」や「過剰な忖度」になるらしい。いかに原資は税金とはいえ、見返りもなくカネを支払うお人よしが公務員にはいるというのだから、自身がよほどのお人よしか、四半世紀続いてきた「悪しき慣習」を見ないできた取り締まり当局の、公務員は相身互い精神か

▼地元の理解を得て工事を進めることとした県の行政指導が一連の事件の原因だとまで突き止めるなどは期待もできまい。黒幕とか巨悪は眠るというのがどういうことか何となくわかるような気がする。