伊勢新聞

2020年6月26日(金)

▼「自動運転化で安全性が重要となる中、時宜を得た試験場。県としても全面的にサポートしたい」と鈴木英敬知事。電子部品を中心とした安全性の認証機関「UL Japan」が伊勢本社に設置した試験棟の内覧会で語った

▼大型機器へのICT導入や電動化を背景に、電子部品に対する電磁波の干渉事故を防ぐための装置という。国際規格変更に備え、国内製品の海外展開に貢献することになるらしい。電磁波の安全性の基準は、機器の変化とともに変わるということだろう

▼電磁波の危険性に対する話題は電子機器の普及とともにめっきり減った。かつてはパソコンはむろん、携帯電話が発する微弱な電磁波も脳、特に児童の脳に影響するなどと言われたが、写真を撮られると魂を抜かれるなどの文明開化に伴う迷信の類いだったか。知事に「安全性が重要となる中、時宜を得た」などと言われると、危険の中にいるような感じがしたころを思い出す

▼工業製品などの国際標準で定めるための機関ISOの認証機関を3月、県外郭団体の環境保全事業団が辞退した。安全な工場であることを証明するための必須の資格とされ、県が後押ししてきたが、審査委員が高齢化し補充が難しいと、県OBの高沖芳寿理事長が事業断念の理由を語った。不採算で、成長も望めないためというのは業界の観測だ

▼ホームページに「ISO審査登録」事業は残るが、中身は削除されている。撤退発表もないのは対外的に関心はないと見ているせいか。安全性にもはやり廃れがある。時宜を得ているのは電磁波かと、知事の談話に思った。