伊勢新聞

2020年6月25日(木)

▼河川に漁業権を持つ桑名市の桑員河川漁業組合の組合長が恐喝未遂などの容疑で逮捕された。県は肝を冷やしているのではないか。工事で川に汚濁水が流れるとして四日市市の不動産会社から寄付金を脅し取ろうとしたという。県の指導に従っていれば、そうなるのが一つの形ではあるからだ

▼河川管理は国や県だから漁協に工事許可を求める法的必要性はないと桑名市は言ったらしい。法的必要性はなくても、行政指導で工事を認めてもらわなくてはならなくするのが県の常とう手段ではある。県が、そんなお墨付きを与えていた時期は確かにあった

▼国は公共工事で一切の交渉を禁じているが、県は地元の理解を得て工事を進めるように行政指導した。なにがしかの見返りを与えて合意を取り付けるしかないことになる。「山を越えた先の工事にまで寄付金を取りに行く」というのは県職員らの笑い話である

▼組合長の親族が建設会社を経営して工事の下請けに入るのも一部漁協のパターン。民間業者と争いになることもあるが民事不介入で、警察が動くことはなかった

▼県が国と違う指導をしたのは「環境保全」名目で昼夜を問わず対応を求めてくる組合員らに精神を病む職員も出てきたからだ。政治家の影もあり、長いものに巻かれる体質が発揮された

▼そんな記事を昔書いて見出しに「〝脅し〟」の2文字を入れ、漁協の抗議を受けたことがある。「暴力団扱いか」という問いに「2点かっこを使ったのは、そうではないという意味で」などと押し問答したが、今回逮捕したのは暴力団担当、組織犯罪対策課だった。