2020年6月23日(火)

▼防衛省でさえあのていたらくなのだから、と言えば多少は気分的に楽になるか。東紀州・広域ごみ処理施設建設計画のずさんは本紙『まる見えリポート』で改めて浮き彫りとなり、まるで「イージス・アショア」計画だと言いたくなる

▼昭和19年の東南海地震は軍部に情報が統制され、南海トラフ発生が確実視されている近年、詳細が注目されている。その2年後の南海地震とともに東紀州地域への甚大な被害は今も語り継がれ、その中核市である尾鷲市で、いかに中部電力尾鷲三田火力発電所跡地という広大な土地が降って湧いたように現れたとしても、海抜4メートルの津波浸水区域に飛びつくとは信じがたい

▼跡地活用構想を策定する中で、施設の廃熱を陸上養殖や植物工場に利用する案もまとめた。防災対策の規模は必然的に拡大する。津波不安の声があがるのは当然。加藤千速市長は「盛り土を使って津波を解消する」と市民懇談会で胸を張った。南海トラフ規模の地震、津波に耐える盛り土の構造にどれほどの知識があったか

▼コスト増大で結局断念。万全のデータや計算、広域市町の了解なしに市民と約束したことを露呈した。同市長は「跡地に施設ができなければ(SEAモデル)事業が白紙になる」とも言っている。事業優先で、砂上に楼閣を築き上げてしまったのだろう

▼二転三転後の候補地、市営野球場はモデル事業のための熱、電力供給が困難で、事業の方は再提案するという。施設あっての事業計画が分離して成立するものかどうか。引っ込みがつかないとはいえ、砂上から泥沼に入らなければいいが。