▼河井案里参院議員、河井克行元法相夫妻の逮捕で、検察庁法改正案との絡みが新聞に載るようになった
▼官邸が昨年末、稲田伸夫検事総長に退任を迫って断られて今年1月、広島地検が河井夫妻地元事務所へ家宅捜索。同月末、安倍政権が黒川弘務東京検事長の定年延長を閣議決定して、検察庁法改正案を国会上程。東京地検が3月、夫妻の議員会館事務所を捜索―という一連の経緯には、やはり目を見張らざるを得ない
▼官邸と稲田検事総長との「対立関係」が黒川氏の定年延長につながり、一連の捜査を「稲田総長の意趣返し」という見方がほかならぬ「法務・検察」にあるというから、政敵追い落としに権力を駆使した戦前の「検察ファッショ」を思わせもする
▼昭和57年の売春防止法事件での新聞記者逮捕は、検察の権力闘争のすさまじさを見せつけた。のちの検事総長で「巨悪を眠らせるな」の名言のある「ミスター検察」伊藤栄樹が当時捜査検事で、対立する派閥の「特捜の鬼」と称された河井信太郎法務省刑事部長を失脚させるため、同部長に〝ガセネタ〟を上げる。掲載した新聞記者が逮捕されたのだ
▼『特捜検事ノート』の著書もある名検事河井が記者のニュースソースになったのは、司法界で力のあるかつての上司が記者の父だったからだが、漏らした情報がガセだったため罪に問われず、大阪高検検事長に栄達。対立は敵対する派の選挙違反摘発などの形でその後も続いた
▼稲田検事総長はめでたく定年まっとうの見込み。安倍晋三首相は求心力を著しく低下させたという。悪寒を感じなくもない。