新型コロナウイルス感染症の終息が見えない中、東海地方は10日に梅雨入りし、三重県も本格的な出水期を迎えた。近年、各地で発生する集中豪雨や台風の大型化による土砂災害、河川氾濫などの被害は大きく、コロナ禍での被災を考えると不安は尽きないが、さまざまな大規模災害発生を想定し、鈴鹿市も着々と避難所での感染拡大防止対策を進めている。
市によると、今月1日から、風水害の危険度に応じて開設する、公民館を中心とした自主避難所の数を25カ所から27カ所に見直した。が、今年度はさらに避難所での密接状態を避けるため、27カ所に加え、国府や加佐登など6小学校の体育館を気象警報発表時から避難所として開設し、計33カ所で対応するという。
6カ所の増加は、過去5年間の大雨や台風による各避難所への避難者数から算出。防災危機管理課防災グループの澤田大輔グループリーダー(50)は「1人当たりの空間面積を2平方メートルから9平方メートルに見直し、避難者同士の間隔を確保した」と説明する。
避難所開設を担当する避難所派遣職員は、各課から選出された120人。4班に分け、各避難所に2人ずつ配置するよう交代制で対応する。
先月25―29日にかけて市役所で実施した避難所派遣職員対象の研修会には、計67人が参加。新型コロナウイルス感染症予防対策となる新たな取り組みとして、避難所開設時にフェースシールドや消毒液などが入った市独自の「感染症対策グリーンボックス」を活用すること、体調不良者への対応手順などを学んだ。
避難者の受け入れ時に、体調不良者は非接触型体温計の体温測定や体調聞き取りにより、別室や別教室に誘導。プライベートテントに設置した段ボールベッドや畳マットを使って休ませる。保健師が見守り、体調に応じて、救急車の要請などをするという。
現在、同市議会6月定例議会に上程中の令和2年度一般会計補正予算案には、避難所での感染症予防対策として、体調不良者専用スペースを避難所に確保するためのプライベートテント21基とダンボールベッド97台、非接触型体温計37個を購入する費用として、299万3000円を計上している。
同課では現在、グリーンボックスや既存の畳マットなどを各公民館などに配備しながら、いざという時にどの部屋をどう使うかなどの確認作業も進めている。
そのほか「自宅では危険だが、感染が怖くて避難所には行きたくない」と車中で避難したい人への対応として、学校のグラウンドを開放することも検討しているという。澤田グループリーダーは「基本的に自動車での避難は良くないが、実際問題として想定していく必要がある」と話す。
さまざまな対策を進める一方、避難所で対応する職員2人でできることには限界があり、人員確保は大きな課題の一つ。
風水害だけでなく、南海トラフなどの大規模地震が発生した場合、避難者数は桁違いに増加する。復旧活動や二次災害を防ぐための活動など、避難所派遣職員以外もそれぞれの持ち場で動かねばならない可能性があり、澤田グループリーダーは「そこにコロナ対策も加わると、限られた人員でどこまでできるのか」と、体制強化の必要性を挙げる。それには「今後さらに地域と連携した避難所運営を進めることが重要」と、地域などの協力の必要性を語り、「ホテルや旅館などの宿泊施設を避難所として活用することも視野に入れていく」と話した。