▼鈴木英敬知事が性的少数者(LGBTなど)への理解を広げるため、性的指向の暴露などを禁止する条例制定の考えを示した。年度内制定を目指す。都道府県では大阪、東京、茨城に続き4例目という
▼知事が条例制定の考えを初めて示したのは平成30年7月の知事会見。東京都が暴露(アウティング)を禁じる条例を検討しているとして「研究はしてみたい」と語った。それから2年。満を持しての提案ということか
▼LGBTなどへの対応について、知事が試行錯誤を続けていたことは想像に難くない。「ダイバーシティみえ推進方針を平成30年に策定し「いろんな人がいる。一人ひとりを大切に、思いやり、ともに輝き合う」と呼びかけたが、LGBTなどについては、例えば全国でも先進的とされる伊賀市のパートナーシップ宣誓制度に対し、「要綱ではなく、条例でやる方が」など含みを持たせていた。県自身の条例制定には「あれ、住民票の発行ですから」。アウティング禁止に、渡りに船で飛びついた感がある
▼暴露の悲劇は多く指摘されている。差別や偏見を解消したいという知事の思いは大いに評価される。が、先のダイバーシティへの知事の呼びかけに照らすと、途中経過的措置であるのもまた確か。誰が誰を好きになろうと本来自由で、思いやりなど必要な社会が本来望ましい
▼一方のパートナーシップ制度には法の下で平等の視点がある。家族対象の県営住宅に性別の届けは不要か。同性パートナーが入居できるのかの問題である。理想は地球規模で行動は足元から―どちらも大切な問題である。