伊勢新聞

2020年6月3日(水)

▼県議会の新特別委員会が「差別解消を目指す条例検討調査」の名称となるのは時宜を得たものであろう

▼平成28年に成立したいわゆる差別3法。障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法、部落差別解消法が、県内のほとんどの自治体で周知、啓発されていない。せめて県議会が制定した障害者差別解消条例ぐらいは見直しを含め運用実態を把握すべきではある

▼方向性を決める1日の議論は2大会派で平行線をたどり、北川裕之委員長の提案で「2段階の調査」に落ち着いた。新型コロナウイルスに関する人権侵害の問題を優先させ、13日に決めた調査事項の「さまざまな差別の解消に向け、新たな条例制定も視野に調査する」は後回しになるというから時世時節ではあるのだろう

▼ちょうど熊野市が「市在住者です」の確認書を交付した。他県ナンバーが蹴られたり所有者が怒鳴られたりする相談が寄せられ、市は「住民の不安を解消するため」発行したという。全国的流れではある

▼市民は「変更登録をしてほしい」と担当者。法令順守の呼びかけのようだが、県外から来た車はもちろん、変更しない車は何をされても知りませんよ、と言っているようである。差別ではないかという批判もまた、全国で起きているが、「事実に基づく冷静な対応」を求める県の感染拡大防止指針は、患者や医療従事者などへの中傷を戒めるが、県外ナンバーには触れていない

▼中傷や暴力的手段がよくないのは誰でも知っている。あいまいな境界域にある県外車(者)排斥をリードする行政をどう見るか。県議会の出番ではある。