2020年5月28日(木)

▼いつまで続くか「不要不急の移動自粛」。と言っても、県が新型コロナウイルス感染症拡大防止への指針で示した「移動を控える」ことに異論があるわけではない。移動の自由は憲法で保障された国民の権利だが、それが制約される事態であることもまた確か。ただ「不要不急」というあいまいな表現は、そろそろ削除すべきではないかと思うのだ

▼指針は「不要不急の移動」について「帰省や旅行等」と示す。「等」についての解説はない。ケース・バイ・ケースで、あるいは常識で判断して、ということだろう。各個人の千差万別な〝常識〟が、例えば県の指針が戒める「SNS等による事実ではない誤った情報が拡散」されることなったりする

▼他県ナンバーの車が蹴られるなどの熊野市で起きた心ない行動の背景には、不要不急の移動自粛中にけしからんという怒りがあるに違いない。国民の権利を制約する以上、〝緊急〟時を過ぎたら、できるだけ早く具体的に明記するのが法治国家というものではないか

▼厳密な意味で「不要不急な移動」があるかどうかは疑わしい。散歩から旅行、映画・演劇、音楽鑑賞、スポーツ観戦など、ある人にとって不要不急でも、ある人にとっては不要不急ではない。人はパンのみにて生くるものに非ず(新約聖書)である

▼「不要不急の移動自粛」は6月18日までだが、指針は以後も、国の専門家会議が示す「新しい生活様式」の徹底を求める。同様式には不要不急の「移動自粛」が厳然と残る。不要不急とは何か。県民の分断を防ぐためにも、県は中身を明確にすべきだろう。