伊勢新聞

2020年5月15日(金)

▼県議会の正副議長選挙は、はた目から見るとチキンレースに似ている。その座を争って〝不退転の決意〟に見えたいくつかの顔ぶれがいつの間にか一本化されていたりする

▼新型コロナウイルス禍の中の今年は攻防は避けたい考えで、例年より落ち着きを見せていると本紙は伝える。2大会派が正と副の議長候補を1人ずつ立て、辞任予定の現議長が再選を目指す。議長候補が1人なら別に擁立の動きもあるという。建前と本音の違うことで、例年とそれほど変わらなくも見える

▼だから、というわけでもないが、閣議決定通り黒川弘務・東京高検検事長が定年延長を受け入れた。法の厳正な番人という建前と、頂点を極めたいという本音は別ということだろう。本人の評判はいいようだが、安倍晋三首相も、だから検察人事を意のままにする好機と踏んだのだろう。無能では底意を見破られる

▼県3役の出納長ポストを農林水産部長と地域振興部長が争ったことがある(役職名は当時)。猟官運動に無縁の地振部長に心境を聞いたら「くれるものならもらうさ」。公務員の人事への思いに目からうろこが落ちる気がした

▼農水部長が知事意中で、地振部長は議会重鎮が推していた。「特定の人に近かったのが敗因」と農水部長がのちに語ったが、議会重鎮の目を避けるため両部長をいったん退職させ、3カ月後に農水部長を呼び戻した。県を離れた人材の起用は県人事としては苦肉の策だったが、鈴木県政で再現される前例となった

▼霞が関の一方の雄だった財務省は官邸に人事を握られてその面影はない。検察庁もまた―。