伊勢新聞

2020年5月8日(金)

▼新型コロナウイルスは人間が築いてきた文明へのアンチテーゼだとか反逆だなどの史観があるようだ。ゴールデンウイークを終えてちょっと便乗して見たくなったのは、まさにアンチテーゼ、皮肉な存在に思えたからだ

▼今年は4月の25、26日から始まったらしい。13日間の大型連休だ。昔は昭和天皇の誕生日の4月29日に始まり、労働者の祭典メーデー(5月1日)を経て3日の憲法記念日、5日のこどもの日と続く何の変哲もない飛び石連休だった。日曜日がどこに入るかで最大3連休の飛び石となり、GWの言葉が生まれた

▼飛び石は工場の稼働率がよくないなどで4日を休みにしたり、29日から3日の間の土日の入り具合で連続休みにしたりする企業が現れ、土休になってさらに拡充された。平成の世になって天皇誕生日が昭和の日、4日がみどりの日になり、振替休日の制度ができ、大型連休が定着した

▼日本人は「バスに乗り遅れるな」の国民性とされ、自律他律で有給休暇の消化は悪く、お上が一律休みにしなければ誰も休ま(め)ない。世界に冠たる祝日数になったゆえんと言われる。国民に休日を満喫してもらうため整備したGWが、コロナ禍で最大の脅威になった

▼移動、外出の自粛という強制的要請となり、観光市町が自ら来訪お断りを宣言しなければならない事態。飛び石時代とは比較にならぬ打撃となり、V字回復に暗雲を漂わせた。人知へのしっぺ返しといえぬか

▼7月に海の日とスポーツの日が重なり土日に続く。来年また祝日を移動するかどうかで一騒動あるのだろうか。